さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

BE:FIRST東京ドーム公演に愛を叫ぶ

BE:FIRSTの東京ドーム公演に行ってきた。

前回彼らのライブに行ったのは2022年10月の市川文化会館だから、実に二年ぶりである。

明日には、重過ぎるペンライトを三時間振り回した代償が来るはずだ。腕が動くうちに今日のことを記録せねば。 

結論を急ぐと、最高だった。

ものすごい最高。大好き。

 

一応、理性あるファンとして今後のための文句を先述する。ライブ中、社長に感謝を述べるひと時でたっぷり時間を取るのはBE:FIRSTのライブあるあるとは言え、やはり少々異常に感じられるので、そういった師弟愛の交歓はぜひとも打ち上げなど裏で行ってほしい。社長にお礼を言うより私らに感謝してくれよと思う。まぁ、最後にたっぷりお礼してくれたけどね。

あと、入場列の誘導が下手くそだった。文句は以上。

 

 

BE:FIRST全員、歌が上手くなっていた。

最愛のマナトをはじめとして、

常日頃「あぁもっと歌がんばろうよ」ともどかしく感じていたレオくんに至るまで、目に見えて歌唱力を上げていた。しかもライブが始まってわずか三曲ほどで、それを確信したのだ。

 

レオくんは比較的、地声の地続きに歌声があるようなタイプだと思う。それゆえ、等身大の発声が曲に対してひどく素朴に響いてしまう。しゃべるときのような揺らぎが出てしまいがちという印象があった。それが今日のライブではひときわ芯のある、太くて自信ある歌唱に変わっていたのだ。

 

歌唱の進化で言えばソウタも。主線のメロディーに呼応するようにソウタのクリーンな高音が挟まれるというシーンが何度かあり、「ここってソウタのパートだったんだ!」と一度ならず驚かされた。曲の大平原を切り裂き、意志の強さで光をもたらすラップは出色で、サクラップで育った私はどうしても惹かれるものがあるのだが、彼の癖のない歌声のまっすぐな成長もまた、まぶしい。

 

そしてもう我慢できないのでマナトのことを語る。

マナトといえば細いながらどこまでも清らかかつ器用に変化する玄人の声音が持ち味。それが何と…

 

めっちゃ太い声も出せるようになったんだよ

 

「BF is …」なんてドスが効いてるったらない。もう仰天した。いつからこんな肝の据わった底から響く声を出せるようになったのよ。これまではその声音の軌道が描く巧みな曲線に魅了されていたが、今日はもう、マナトの歌声には有無を言わさぬ支配力が備わっていた。完敗。あっぱれ。マナトが駆け抜けていった季節、その中で彼の意志で確かに培われた技術に改めて惚れ直した。

 

しかも、歌だけじゃなーい。

ダンス。ダンス!!

映像だとグループ全体を移すものだが、なんせこちらは生。一点集中でマナトの一部始終、目を皿にして見ていたが…

マナトの踊りっぷりの素晴らしいことときたら!こまごまと俊敏に身体を器用に操っている。小回りがよく効いており、無数に広がる曲中のリズムと遊んでいるかのような。ダンスはきっと、彼の親しい友達。曲の中をすいすい泳いでいくマナトを追うのに目が忙しかった。

 

今回は何を隠そう席が非常に良かったのだ。始まった瞬間は「豆しか見えない…二万も払ったのに…」と絶望しかけたのだが、数曲経ての暗転後、目の前でSoftlyが始まったときは仰天した。マナトがマイクスタンドを優しく抱擁し甘やかに揺れる様にめまい。近すぎ。何と目の前にセンターステージがあったのだ。センターステージはもうオペラグラスが不要なほど目の前にBE:FIRSTがいて、衝撃のあまりその場で1.5歩後ずさってしまった。いつも飽きるほど映像で見ている彼らがそのまま実体を伴って目の前で歌ったり踊ったりしつづけていて、あまつさえ踊る体が発する衣擦れの音までするのだ。もう毎秒もたらされる情報量が多すぎて贅沢さにくらくらした。あぁこの人たちはこんなにも存在していて、絶えず七人で呼吸し、歌い舞うのだ。

てかマナトの顔がめっちゃかわいい。マナトは年に一回チリチリパーマをかける衝動に駆られるようなので、今回も始まるまで懸念がないではなかったが、杞憂だった。ふんわりナチュラルなウェーブ。かわいい。ちまっとまとまったかわいい顔立ちが、客席の熱気にあてられてか少し挑戦的になる瞬間があってたまらなかった。たまに目がきらっと光っていてきれいだった。私は絶対マナトと公演中目が合ったし、勝手にいくつもの気持ちを渡した。

 

髪型つながりで言うとジュノンの黒髪が衝撃的だった。これは人をダメにすると思った。ライブが始まって一人ひとりがアップになるあの瞬間。会場の皆が固唾をのんでその日の彼らのビジュアルを目撃する訳だが、率直に言って黒髪ジュノンはクズバンドマン。それがライブの進むにつれどんどん美しさを増し、最終的には「これは人を破滅させる危険な男だ」と確信した。同行した弟がジュノンにバッチリ目線をいただき、おこぼれで私も目が合ったのだが、あまりにかっこよくてパイプ椅子に尻もちをついた。なんだか画素数がえらく高く、薄く輝く何層ものベールに包まれているかのようなまばゆさであった。参ったね。最愛はマナトなので基本はマナトのみ見ていたのだが、ジュノンには無言でも「こっちを見ろよ」と言われているようなオーラを感じてしまうのだ。しかも歌はあくまでも抜群にうまく、いかなるパートでも激しく才能を炸裂させていた。

 

ステージが近いだけでなく、そのままステージごと動き、わが頭上を彼らが通り過ぎて行ったときは仰天超えて笑えた。ジャニオタ歴長いがムービングステージの当事者になるのは初めてで、改めてとんでも装置だなと思った。これほど松潤に感謝したことはない。同行した弟いわく、レオの汗が降ってきたそうな。

 

Softly、SOS、Grow Up、Salvia、Betrayal Gameなど好きな曲が軒並み目の前のステージで披露され、感激衝撃でまばたきを中止、口をあんぐりと開けて唖然と見ていた。もう一秒一秒がものすごい厚みで豊かで。心底かっこよかった。しかもBE:FIRSTが最高なのは公演中にパフォーマンスが尻上がりによくなっていったことだ。人が自分の見ている目の前でスケールアップしていくという体験はそうないだろう。会場の熱気を動力に変え、パフォーマンスには野心の輝きが増し、メラメラと東京ドームは燃える。

始まったばかりはドームにうつる陽炎のようだった彼らが、どんどん会場を掌握し、暴れ慣れたホームグラウンドのように歌い踊れば、もうドームだって狭かった。

 

私はこのドームが終わったら卒業しようかと思っていたが、その駄策は撤回した。これからもBE:FIRSTが望むまま彼らを見守ってやり、飽きるほど人生を伴走してやろうと決心した。私がおばさんになったら彼らもおじさんになっているだろう。あなた方の目指す「ドームのその先」は例によって漠としてわからない夢だが、君らが手を離さない限り私はしつこく君らを楽しみにしてしまうと思う。それまでまた、よろしく。今日はありがとう。

不調初日の長い夜

水曜日に会社で働いていると、昼前くらいからにわかに咳が出始めた。こりゃいかんと思い、通勤時の暑さからそのまま外していたマスクをカバンからそっと取り出して着けた。そういえばその日の朝、麦茶を一口飲んで激しくむせていたのだが、今思えばあれは不吉な前兆だったのかもしれない。

お昼を食べながら、帰りに絶対病院に行こうと決意した。決意のみならず、家族LINEに宣言。「少し咳が出るので帰りに病院に寄ってきます。」5分と経たずにギョッとした顔のリアクションスタンプが押され、家族に静かな動揺が走ったであろうことが伝わった。食べ終わると、夜も診察している近所の病院を検索し始めた。しかし、体調不良度満点の不穏な検索内容を悟られたくなく、同僚が背後を通る際は咄嗟にYahooのトップ画面に切り替えたりと虚しい努力をしていた。そんなことをしなくても盛大に咳き込んでいるので全くもって無駄な努力である。

 

定時ぴったりに上がり、目星をつけた病院めがけ猪突猛進に歩いて行った。大通り沿いにあると思われるのが地図を読めない自分にもありがたく、階上の窓にお目当ての病院名を認めて喜び勇んで入口へ向かった。しかし、自動ドアが開かない。接触不良かしらん?と鼻息荒くもう一度ドア前に仁王立ち。が、開かない。おかしい。おかしい。焦ってドア前の看板を見ると、診察は5分前に終了していた。話が違う。20時までって言ったじゃないか。ネットはこれだからイヤだ。ガックリ項垂れて駅に向かう。夜診察しているところは思ったよりないのかもしれない、甘かった、と絶望と焦りが込み上げ思わずえずいた。

ヨボヨボ乗車し、私は引き続きオエオエえずきながらスマホで再検索をかけ始めた。隣に座っていたサラリーマンは始めノーマスクだったが、検索と咳き込みを猛然と両立している私に気圧されてマスクを装着していた。うん、それでいい。存分に自衛してくれ。

 

たどり着いた病院は8割型飲み屋が入っていると見受けられる雑居ビルで、エレベーター前にはこれから飲みに行くであろうサラリーマン5人衆がうきうきと会社での出来事なぞを語っていた。彼らは重い咳をした私が同乗すると石のように黙った。先に降り立った私のフロアが目に入っただろうか?満杯の待合室は彼らに警鐘を鳴らしたに違いない。

 

ここからの時間は苦難に満ちていた。19時50分に入場。初めてです、と伝えると、何と受付も保険証の提出も全て専用アプリで自身で手続きせよと言うのだ。アプリ…。QRコードを読み込めとのこと。最近居酒屋でもお前のスマホから勝手に注文しろよな!というスタイルが増えていて、いつ私のスマホを使っていいと言ったか!と毎度鮮烈に怒っていたのだが、今はその元気もない。力なくカメラを立ち上げる。しかし、見た感じ2割くらいしか進まないアクセス、シーン。再読み込みしてもシーン。遅々として進まぬ。そうしている間にもどんどん新たな患者が訪れる。「あの、アクセスできなくて…」と弱々しく受付に訴えると即座に「これWi-Fiが書いてありますのでお渡ししますね!」と紙を渡される。あーもう。アプリのダウンロードのフェイスIDに三回連続で失敗。おまけに「今ですか?40分待ちくらいですね」という声が聞こえて絶望する。ええい、やぶれかぶれだ。紛失に怯えながら膝に乗せた保険証を写真に撮り、次のページでは、今日の症状「咳が出る」はマストとして「喉が痛い」のか?痛くないけど咳だけ勝手に出るよ…いや咳しすぎて喉も痛くなってきたかも?ともはや自分を見失う。なんとか回答を終え、「受付完了!」という文字を見てぐったりとソファに沈む。疲れた…。しかし、こんな時間に診てもらえるし仕方ないよな、と卑屈に自らを納得させた。

周りを見渡すと狭い待合室にこれでもかというほど人が詰まっている。歓楽街近くということもあってか、会社帰りのサラリーマンのみならず、外国人観光客やホスト風の男、これ終わったら行きつけのホストクラブにでも行くのかな?と言った風体の女の子もいる。恐ろしいのはこれだけ咳WBC決勝というほどの院内において、マスクをしていない者が実に3割ほどいたことだ。大丈夫なのか…?私の上司は先日、喉の痛みが治らないからと言っていつも通りのノーマスクで病院に突撃して普通に追い返されていた。が、ここは歓楽街近くという土地柄もあってかおおらかで、ノーマスクな者もめいめい、この病の館に挑戦していた。

待っている間Twitterのタイムラインを久々に閲覧。読んでいるうちに不快さがしんしんと降り積もり、やっぱTwitterってゴミだな〜という結論に至る。心が荒んでいるのでnew jeans 中卒、などと検索し、己のゴミさを高めた。積極的に自分を落ちぶれさせたい気分だった。他には最近友人から小耳に挟んだジャニーズの自撮りファンサ炎上事件も検索。ジャンキーなネットサーフィンで世界一不毛に時間を潰した。

Twitterとインスタの反復横跳びにも飽きた頃、手ぐせでふとGmailを開いたところ目に飛び込む「問診票が届いています」受信時間は約1時間前。サッと血の気が引いた。もしかして これ送信してないと 永遠に 呼ばれない?私 ずっと 無駄に ここに 座ってたの? リセット?ここからさらに 1時間とか?ショックで気が遠くなりながらヨボヨボと5歩先の受付へ。「あの、これ問診票気づいてなかったんですけど、、、順番受付られてないですかね?」と蚊の鳴くような声で問うたところ「大丈夫です!順番は来院した順なのですでに受付られてますよ!」とのこと。安心しつつもうヤダ普通にそっちで手続きしてくれよ嫌い嫌い無理、と胸中でギャン泣き。

待っている間、背後から格の違う咳が絶え間なく聞こえてきて、否応なしに緊張が高まる。もはやここで純度の高い新たな菌をいただきそうだ。いや、落ち着け、マスクを信じろ、そもそも私既に何かに罹患してるっぽいし大丈夫、と脆弱過ぎる根拠で己を奮い立たせた。20時35分。「まだ呼ばれない」という家族グループ宛LINEはもう二通目になっていた。

 

ようやく呼ばれた。「今日はどうしましたか?」と聞かれ、「今日の昼前くらいから咳が出始めて…この週末旅行したりスポーツ観戦したりしてたので…」などと言わなくてもいい懺悔までしてしまう。喉が少し腫れてますね、とのこと。コロナとインフルと溶連菌を一括して確認できる検査をすることになった。
10分後くらいに検査に呼ばれた。例によって鼻を貫かれること2セット。喉を拭われること2セット。淡々と処置してくれる看護師さん。こんなことをやらせてしまって…と内心で必要以上に恐縮し、すごすごと退室。

15分後、運命の結果発表。「えー検査しまして特別な治療が必要なコロナ」え終わった「インフル、溶連菌ではありませんでした。」ありませんでしたかい!!!心臓に悪いわ。「するとただの風邪ってことですか?」とすぐさま言質を取りに行く私。「そうですね。」とりあえずほっと胸を撫で下ろし、薬はなるべく日数多めにいただきたい旨訴えた。会計の予想外の高さに動揺しつつ21時30分。受付から1時間40分で、ついに私は病院を後にした。

 

薬局への道すがら、ある一角に異様な人だかりができていた。見ると、しょんべん横丁の入り口を前に外国人たちが大挙し、写真撮影をしていた。こんなところが人気なのか…。I am desease.などと話しかけたらどうなるかな、などとよからぬことを考えた。ようやく、24時間営業の薬局に辿り着くと、目に飛び込んできた「ただ今の待ち時間:30分」の文字。ハハ……そっすよね。24時間営業してくださってますしね…。まぁでもほら!本当はもっとすぐ呼び出せるけど、バッファを持たせて30分表記なんですよね?私だって本当は今日中に完成させられる書類でも、納品日は来週に設定してるじゃんね!?それと同じ!などと強引な解釈で己を慰める。まわりを見ると先ほどの院内でも見かけた顔ぶれがちらほら。院内仲間①ノーマスクの女の子がアイライン片手に抜かりなく化粧直し中である。一体この子はどこが悪いんだろう。さらに、院内仲間②である東南アジア系のカップルもやって来た。彼女の方が重い咳をしているのだが、その出立はタンクトップ・ショートパンツ・腹出しとほぼ裸みたいな格好で、これでは治るものも治らない。彼女は30分待ちの張り紙を見るや否や、顔を顰めながら彼氏に早口で状況を伝えていた。一旦外出することにしたらしい二人だが、店外へ歩き出した彼女が大胆にもズボンの中に手を突っ込み盛大にお尻を掻き始めた。びっくりして、私は目が離せなくなった。すぐ後ろについてる彼氏は何食わぬ顔でノーコメントである。そのままお尻に手を突っ込んだまま、彼女は往来に消えていった。

その後も受付で「マウントフジに登ったのだが足を怪我した」と言ってるっぽい英語のお客さんのサンダルの足を眺めたりして、そりゃ無謀だろと改めて外国人観光客の無鉄砲さに震えたりした。困っている彼らにとってこの国は優しいだろうか?


「今度は薬局で待たされてる」との私の悲嘆LINEにも家族の反応は鈍く、もはや返信をくれるのは父のみである。そのほかの面々は、先刻のコロナ陰性の報告を見て満足したのか、以降のリアクションは既読のみ。同情乞食となった私は友人にもLINEした。即座に優しい返信が来て内心涙する。症状も無論辛いが、それ以上にこの待ち続ける状況事態にダメージを受け始め、私は悲壮感に打ちのめされていた。

 

22時。ようやく薬の処方も終わった。ぐったりと薬局を出ると、場所柄がお店をやっていると思しき女性からチラシを押し付けられそうになるも、人生一の地蔵化を行いスルー。私は病気なんですよ。不意に後ろから、飲み会終わりと思われるニーちゃんの会話が耳に入った。「彼女にも気を遣うよ。私といても楽しくないの!?とか思われちゃうじゃん。」「あーまぁ自立って大事よな」「自立してても自立してる同士でまた寄りかかっちゃう。」「やっぱどんな人間関係でもさ〜大事なのは遊びよ!」「ディスタンスな!」「そうそう距離感」
そうか、大切なのは遊びなのか。私は金言を与えてくれた主を確かめるべく、さりげなく一度振り返った。思ったより二倍ほどチャラいニーちゃん二人組だった。信号が青になる。「じゃぁまたな!ありがとー!」別れていく二人。私は何となくこの二時間が報われたような気持ちになり、長い横断歩道を渡り始めた。

一張羅に敗北する

人の体は三ヶ月如きでは変わらないらしい。これは私がお腹を始終ピーピーに壊していた時にかかった消化器内科の先生に言われたことだ。「酒をやめれば治りますかね?」と7割がたそうだろうも思いつつ質問する私に先生は「うーん あんまり関係ないと思います。酒を飲まなくすると言ったって三ヶ月以上やらないと体はそうそう変わらないんですよ。」

 

そうは言っていられない事態だ。私はすべてのビールを断ち切る。減量のためだ。なにせ私は62キロあるのである。いや、数字は実のところ問題ではない。それよりも、キツかったのだ。コンサート用に買った一張羅のワンピースが。

 

一昨日、私は愛するWayVのコンサートに行ってきた。私は常にコンサートには新しい服を着ていきたいという気概を持っているタイプなので、今回も開催二日前にルミネに駆け込んでいた。それは前チャックの素敵なワンピースで、ややくすんだメタリック色は近未来的な雰囲気を醸していた。何これDiamonds Onlyじゃんともはやこじつけイメージで大いに浮かれた私はあえて聞き逃してしまったのだ。店員さんの「ではこちら今着ていたサイズのSでよろしいですね!」だって丈はピッタリだった。色も似合っていた。

 

予兆はあった。帰宅しドヤ顔で試着姿を披露する私に母は「なんだか胸が大きく見える」と微妙な顔で言った。さらに当日出発前化粧をしながら「なんだか体がカッチコチに固定されてるな」とも思っていたのだ。

しかしながら。あまりに残酷ではなかろうか。駅に向かう車の中、ワンピースがキツくて息ができないというこの事実は。

 

一張羅である。試着はした。ほっそり見えた。シルエットは良い。でもその下で体が真空パックされる。座った時にこうなるとは。「近未来的なメタリック」どころかこれはさながら鎧だ。胸を叩くとコツコツ言う。

すわ帰宅か、と思うほどの呼吸困難のさなか、意外にもこの服の構造に救われた。チャックだ。なにせこのワンピースはチャックが前面を縦断している構造。

ならば下げればいい、チャックは!


折しもこの日は大雨かつ肌寒い日。ワンピースの上にジージャン、さらにレインコートを着込んでいたため、私は賭けに出た。ジージャンに隠れている部分ギリギリまでチャックは下し、(この時点で圧政に苦しむウエスト王国にたちまち自由がもたらされ、わが腹肉たちは歓喜の舞を踊った)当然ジージャンのボタンは全て閉めた。これによりあたかも、デニムジャケットとおしゃれなスカートを履いてきた女が出来上がった。自らの情けなさと咄嗟の対応力を同時に実感し、思わず遠い目で乗る特急電車。危うくWayVを見る前に窒息するところであった。

 

このワンピース呼吸困難事件を聞いた母は私以上に事を深刻に捉えたようだった。娘の想像以上のデブ化にショックを受けた母は一念発起、有象無象うごめくネットの海に答えを求めた。「太りやすい体質 食事」「痩せる食事」「体重 減らす 食事」

 

こうして私は家族を巻き込み(母だけ)、減量に取り組むこととなった。弟からは63キロになると「ムサ」というオリジナルの蔑称で呼ばれるというペナルティーを受けるため、気を引き締めなければなるまい。今のところ、「サラダを先に食べ切るまでメインを食べない」「僕はすべてのビールを断ち切る」作戦を地道に実践していこうと思う。支離滅裂な昼間の私が強敵である。※昨日は大きなカレー(なんかお腹空いてるかよくわかんないな〜と思っていたのに)、今日は油そば(大)(並盛りの食券を買ったのに店員さんから「大盛りでも同じ値段です」と言われ、食欲に抗えなくなった)

BE:FIRST代々木公演に入ったことにする

BE:FIRST初のアリーナ、1月27日代々木体育館公演。今huluでの配信を見終わったところだ。思い出した、私の本命は彼らだということを。私はもう、代々木公演に入ったことにする。そして2時間弱浴び続けたBE:FIRSTという嵐を書き記そうと思う。

始まった瞬間、彼らの歌のうまさに衝撃を受ける。私は昨年10月の市川公演に入っていたのだが、その時より飛躍的に歌がうまくなっている。特にMVPだと思ったのはシュント。以前までの彼はその野性味溢れる自身の音色にやや振り落とされ気味のところがあった。声の獰猛さが音程をなぎはらってしまうような。今回のシュントは違う。ギラギラ輝くメタリックな音色を完全に手中に収め、音程の中で思うさま暴れていた。

 

そう、全国ツアーを経てBE:FIRSTは全員の音色が覚醒した。7人の歌声が自らの強みを見つけ、曲中で百花繚乱する。

 

最愛のマナトだが、その端正な歌いぶりには改めてほれぼれする。静寂の場に正確に一針目を下ろすマナト、彼が舵を握っている限りはこの曲は沈没しないであろうという頼もしさ。まろやかで耳溶けの良い声で丁寧に紡いだかと思えば、張り詰めるべきところではしっかりスパイスを与える。マナトの歌声の軌道で線を結んだらきっときれいな星座ができる。

(顔がかわいい。緑髪も似合ってるね。最初見たとき社長に染め上げられたと思って悪口言ってごめんね。)

 

リョウキ。ステージの上で派手に咲き乱れるその姿には、彼の仁義を感じる。彼が映ると画面の華やかさが桁違いだ。ここまでかっこつけられたらいっそ清々しい。ステージの上の縁起物と言ってもいいくらいだ。

 (ソウタと肩を組んでいるシーンが多くて、一緒のグループにこんな相手がいてよかったね、とほほえましい気分になった。)

 

リュウヘイは新緑の森みたいに深く爽やかな音色。思慮深さとある種の潔癖さが滲む。また、今回驚かされたのはその色気。彼が歌うと曲に媚薬的な成分が増す。曲中の時間の流れを変え、神秘的な雰囲気を醸し出す。

(顔がかわいい。どことなく貴族的なノーブルな顔立ち。そしてニットに包まれた細腕の儚さに彼の幼さを思い出す。)

 

ソウタは相変わらずラップのいかつさと歌声の可憐さのギャップがすごい。代々木では特に爽やかな歌声が際立っていた。なんやかんや一番歌声が甘くてかわいいのはソウタだ。彼は自分のアイドル性にどう折り合いをつけているのだろうか。ゴリゴリ体育会系な部分、ダンス講師で培われた言語化能力の高さ、眠そうな目、爽やかなアイドルボイス…。色々な要素が複雑に混ざったおもしろい人だ。特別な思い入れはないのに、終盤MC映像で語る彼を見てちょっと泣いた。

ソウタのよく踊るからだにチェックシャツがはためいていて綺麗だった。シャツも喜んでたと思う。ラストで突然「全世界のBESTYに宣言させてください」と彼が口火を切ったときは焦った。世界征服でもする気か?あながちその予想は間違いではなく、また世界への夢を語っていた。世界ってなんだよと問い詰めたい気持ちで一杯になる。一度機会を設けるので「世界」とは具体的に何を指すのかビーファ一人ひとりにプレゼンしてほしい。このすり合わせ大事だと思いますよ。私的にはBTSみたいになりたいのかな?と思っているから、この雑な表現が悔しかったらきちんと説明しやがれ。

 

レオ。春の日差しのようなあたたかな歌声。Softlyでは色気を開放していてかっこよかった。彼は語り掛けるような歌い方で聞き手との距離を縮める。Bye-Good-Bye前の説法はもはや若手僧侶と言ってもいいくらい熟練されていた。話している時の切実な表情に絆される。髪色変えてかっこよくなったね。リョウキと肩を組んだ時、画面のイケメン度が最大出力にななって素晴らしかった。

 

ジュノン。BE:FIRSTのエースにしてジョーカー。よく光を反射するガラス片みたいな歌声。プリズムだ。そのまぶしさで人の目をつぶしかねない輝きを放つ。何かの曲で腰を回す彼を見て妖艶さを恐れた。近い将来、芳醇な淫猥さを醸す魔性になるかもしれない。今はまだ片鱗が見えているくらい。彼の場合は化けたら制御不能な何かが暴れ出しそうな気がする。市川公演で見たときより己を冷静に制御している感じがした。ぶちまけるのではなく、必要なときに炸裂させる。爆発的才能の冷静な使い方を会得した様子だった。

Giftedのラストのフェイクでは満月のジュノン新月のマナトとでも言いたくなるような、鮮烈な才能の競演を見せてくれた。

 

久々に見た彼らのライブは素晴らしかった。見る前に家中にクリーナーをかけ、リビングのカーテンを閉め、部屋を消灯し、スピーカーに繋いでサラウンド音響にした上で臨んだ私の真剣な態度に十分報いてくれた。まったくおもんない芸人が出てくる映像が挿入されたときは皿拭きに席を立ったり、レオピピのありがたい説法中に副反応に苦しむ母を看病したりと自宅感は満載だったし、マナトが主導するMCを見て、この公演に入っていないとは失態だな私!と激しく己をなじったが、否。

私は今日確かに、代々木体育館でBE:FIRSTに会ったのだ。また会おう。

 

 

 

バックストリートボーイズが来たぞ!

 

2月14日。バックストリートボーイズのライブに行ってきた。期待値78%で臨んだところ、まさかの満足度500%を叩き出された。その記録である。

▲おみやげにもらえたポストカード

裏面QRコードを読み込むとセトリのプレイリストがダウンロードできた。手厚い…!

 

▲海に囲まれた埋立地の要塞・有明アリーナ

 

ちなみに私がバックストリートボーイズにハマったのは去年の11月。超新参者だ。遡ればBE:FIRSTが選曲したラブソングプレイリストにI Want It That Wayが入っていたことがきっかけ。どんな曲だっけ?とYouTubeで確認したところ、「レオナルドディカプリオみたいな美少年がいる!」「ちょっと薄毛で顔が菱形の人がずっと歌ってる!他のメンバーは歌わないの!?」「飛行機の前で歌ってる!まるで初心LOVEだな!」と次々びっくりマークとハテナを誘発された。

▲解像度の低い時代

 

その後代表作をひとしきり見ていくうちに、感傷的なメロディー、美しいハーモニー、MVで女性と絡まずにはいられないチャラさ、圧倒的キャラ立ち、何より5人一体となったパフォーマンスにすっかり心を奪われた。サウンド面でも振る舞いでも、私にとって元祖アイドルの嵐のルーツを見たような気がしたのだ。そんな折に飛び込んできた来日公演。しかもバレンタイン?行くっきゃない!

▲写真プリントだと思ったら絵のTシャツでした。

 

開演は19時。グッズ列を舐めており、席に到着したのは18時50分。「ライブの開演ギリギリに席くる人って何なん?信じられないわ〜」などと仮想敵にマウントをとっていた40分前の私へ。黙れ。丁寧なフラグ作りに定評のある私である。

周囲を見回すとポテトやビールを抱えている人もちらほら。飲食OKの現場はスポーツ観戦さながらで新鮮だ。ステージのスクリーンはポーズを決めるBSBの簡素な映像が繰り返し流れている。dynamiteを連呼する女性ボーカルの曲が流れている。BTSを思い出さずにはいられない。BGMが途切れるたび開演か!と身構えるものの、始まらないまま1分過ぎ5分過ぎ10分過ぎ…。徐々に不安になる。どうしよう、このままあと30分始まらなかったら。これが海外アーティストの洗礼か、と震えて待つ。音響席と思しきところにノーマスク白人女性が二名入ってきた。誰…?演出家?彼女…?(サクラ?)
そして19時15分、その時は遂にやってきた。

▲写真OKの現場、初めて。

 

ふっ、と会場が暗転し、客席一面のペンライトの光が立ち現れる。ボーイズの声が聞こえるが姿は見えない、どこ!?
と!!!!
そびえ立つ最上段ステージにバックストリートボーイズが!既に踊っている!一気に感激が押し寄せこみあげる涙。そしてたちまちスマホを構える周囲にビビる。おぉ!私は今欧米のライブに来ています!!!!

▲グッズ会場しか撮ってない それどころじゃない

 

32曲も披露したので曲ごとの感想は割愛するが、とにかく歌がうまい。そんなことを言うのは野暮なのかもしれないが、ずっと音程が正確なのだ。本当に生歌なの?しかし、音源より遥かに圧の強い歌声が生であることを証明していた。特にAJの歌声が出色。ビリビリと空気を底から切り裂くような尖った力強い声。一人でメンバー三人分くらいの音量を出していた。圧倒的支配力。私はタトゥーは怖い派だが、人生で初めてタトゥー姿がかっこいいと思わされた。

 

ブライアンはやはりエース感抜群で、常に先陣切ってステージを扇動していた。笑顔の包容力が強く、すぐさま会場中のハートを集めた。チャーミングなリーダーシップに惚れる。

 

ニックの高くえぐれたような吐き歌唱も最高だ。彼はルックスこそ激しく変化したものの、歌い方のピュアさは変わっていない。技術を身につけた上での青さ、少年性が維持されている。
声だけじゃない。曲中ブライアンやケビンにひっつきに行っていることが多く、その溢れる末っ子感に思わずオペラグラスを本気覗きしてしまう。特にブライアンとニックの絡みに沸いた。

 

私はケビンの生真面目なパフォーマンスが好きなのだが、思った通りピシッと折目正しい踊り方をしていてうれしかった。今日も闇堕ちしたマーベルの博士みたいな出たちである。MCで話す時声が小さい。イメージ通りで大喜びしてしまった。誰かが「ケビーン!」と歓声を上げていた。

 

ハウィーは一際献身的な佇まい。スタンドマイクを前に軽く踊るボーイズ仕草の熟練ぶりときたら。彼の存在がボーイズの一体感を高めている。

 

 

それにしても何て名曲揃いなんだ。最新アルバムのDNAツアーと銘打っているが、序盤から出し惜しみせずGet Downを披露。皆の期待を裏切らない。Shape of My HeartやDrowingの美しいハーモニーはその場を天界に変えた。かと思えば最新アルバム収録曲のPassionateでビートの強さを見せつける。そのアウトロがナチュラルにQuite Playing Gamesに音色を変えた展開には唸った。
As Long as You Love Meを共に踊った時は感無量。もう心の中の私はベルばらぐらい目がウルウルのメロメロ状態だ。

一時間半は優に出ずっぱりだった彼らが本格的に引っ込み、スクリーンに映像が。無数のヒット曲のマッシュアップを歌う彼らがあまりにかっこよく、胸の高まりはもう苦しいくらいだ。期待のボルテージが振り切れそうになった瞬間、Everybodyのイントロが…!
そこからはもう、怒涛。歌い踊り煽りまくるBSB。興奮と楽しさではち切れそうだった。さすがにシンガロングする。声出しライブってこんなに楽しかったんだ。ぶん回すペンライト、踊らざるを得ない身体、頭の奥がショートしそうになった。こんなことは初めてだ。ずっとこの時間が続いていて欲しい。もっと曲で支配してほしい。頭が痺れた。

圧巻のライブだった。MCは自らの貧相な英語力では二割くらいしか言ってることがわかんなかったり、にわかだから知らない曲もあったけど、そんなことはまるで問題にならなかった。彼らの凄まじい牽引力は客席を一人も置いていかない。いいから身を任せな!という頼もしさを感じた。なんて懐が深いんだ。大器だ。力みがないのに容赦はない。これこそボーイズグループの元祖にして決定版。私はもう、参った。バックストリートボーイズはボーイズグループのレジェンドにしてキングだ。ここまで現役の重鎮を私は知らない。しばらく他のライブに行けそうにない。

 

行き帰り記

今週は「頭を使わないこと」に疲れる日々だった。単調さに「つまらない」という本心をそのままぶつけてしまうと、余計疲れる。ここはおもしろがろうとせずに淡々とやり過ごすのが吉だろう。そう考えてなんとか終えた。昼間に使われなかった分、私の脳はなんてことない行き帰りの道すがらよく稼働した。

 

 「ジングルベル!ジングルベル!すーずがっなるー!」そう大声で歌っている女の子。ベビーカーからあふれ出さんばかりだ。元気に季節外れ。たった一か月前なのにクリスマスはもう遠く、隔世の念すら湧く。粛々と保育園に彼女を運ぶお母さん。

 

 お昼休みにせっせと歩いていると前から俳優夫婦が歩いてきた。ノーマスクだからすぐに顔がわかった。何か言う夫に妻が「いやいやいや」と突っ込んでいた。仲睦まじいようだ。牛丼屋に着いてからすぐに友達にLINEで報告した。卓に運ばれてからもしばらく牛丼をほったらかして返信に明け暮れた。それくらい私はミーハーな小市民だ。

 

 終業。会社を出てしばらく歩くと繁華街の片鱗が見える一角にさしかかる。「今ひとり人妻にがんばってもらってるからさ~!」とうれしそうに電話している男。

 帰りの電車は猫バス。あとは乗ってさえいれば黙っていても家まで送り届けてくれる。それくらい油断して乗っている。向かいに座っていた夫婦は濃い眉と、みしっとよく詰まった体形がそっくり。やっぱり似た者通しで連れ添うのかしらん、と思っていたら女の人が先に降りた。失敬、他人でしたね。

 それはそうと、なんとなく湿布の匂いがする。両隣のどちらかが湿布を貼っていると確信した。この匂い、今はもうなくなった父方の祖母の家を思い出す。壁に直接マジックで書かれた誰かの電話番号、トイレに置いてあった造花、とげとげした踏み心地の玄関マット、黄ばんだ冷蔵庫、明かりの消されたおばあちゃんの部屋からは一日中ラジオのこもった音が聞こえた。左にいた男が次の駅で降りてからも湿布臭は続いた。右のあなたでしたか。

 

駅から出て細い裏道から表通りに合流すると、男が今まさにランニングに挫折した瞬間に出くわした。ぜえはあ苦しそうに歩いていく。お疲れ。対岸にいる男の子はやり投げの選手の助走みたいなステップで一歩ずつ跳ねている。熱心な何らかのフォーム練習。一歩、二歩、三歩、四歩、五歩とまで続き、もはや大股で走っている彼。後ろからお父さんと思しき人が彼のもとへ走ってきてホッとしたところで家に着いた。今週もお疲れ様。

路上のミックスベジタブル

家を出ると道がサラダだらけになっていた。ここぞとばかりにカラスがあちこちから大集合して、どんどん袋をつつき回す。引きずり出された千切りキャベツは一本単位で争奪戦となり、路上の治安は悪化の一途を辿っていた。仕方ない。今日は遠回りしていこう。

 

電車の席に腰を下ろすと、今まさに一つ隣の席の人のカバンから飴が一粒こぼれるのが見えた。隣の席にはちみつキンカンのど飴。どうしよう、これ落ちましたよって声かける?でも飴の袋触られたらもう食べたくなくなっちゃう?もういいや、しらばっくれよう。どうせ次に来た人が気づくでしょ。ところが、あえなく飴は新しい人のお尻の下に消えた。あっそんな。しかしその人もお尻の座りにどうも違和感があるのか、二、三度立ったり座ったりを繰り返した。そりゃそうだろうよ、今あなた飴を踏んづけてるんですよ。でっぱりが伝わってきませんか?渾身の念を送るもむなしく、隣の人はのど飴を踏んだまま定着してしまった。あぁ。

 

行きに見かける謎の店を今日こそ検索しようと思う。しかし帰り道にはすっかり忘れている。この店が定休日で閉まっているのか、それとも永久に開くことはないのか。そこを通る時しか思い出さない。この街はタクシーがスピードを出し過ぎていて、すれ違うたびにこれに轢かれたら死ぬな、と思う。

 

帰り道、空を見上げるとオリオン座が冗談みたいによく見える。毎日整然と並んでる。私だったら今日はもうちょっと隣の星に寄っちゃおうとか変化をつけるのに。律儀だ。

 

一人掛けソファを買ったらお尻に根が生えて帰宅後はYouTubeを見っぱなしになってしまった。ずっとNCTの動画を見続ける。集中力を人質に取られたみたいだ。その間絶え間なく私の感受性はアイドルの良さを言語化するためだけに動いている。これを続けていたら自分が少しずつ薄まる気がする。少し怖い。ただ、湧き上がる気持ちのレパートリーを一つでも多く収集するためにも、現象の触媒としてのアイドルを見ることは私に必要なのだ。それに、昼間に疲れた脳へ思う様好きなものを見せてやりたいじゃん。

 

とは言え、自分がスポンジみたいな空洞になっていく気がするのも事実だ。もっと内側に降り積もる何かを緻密に記録していくようなことが必要。味わった感覚で覚えておきたいものは言葉にして保存しておかないと。以前「オリジナリティーのある生き方をしていこう」と突然決心したことを思い出した。それは奇抜な生き方をしたいとか、突拍子もない冒険をしたいとかではない。ただ、普通は見逃す自分の内側のことを大切にして、基準にハマる安心に安易に逃げずにいたいということだ。私はうっすらはみ出すことが多いけど、その分誰にも真似できないことをできる。たまに。

 

ずっと手を動かし続けたら長いマフラーが編み上がるように、生きていれば勝手に自分だけの形になっている。平凡でも非凡でも構わない。