さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

美術館行ったよ日記 10/4追記


あ、この本だめだわ。と思っても、なんとなくまた気が向いた時に別の章から読んでみると、意外なほど今にハマる。気持ちなんかたくさんあって当たり前。


最近よく美術館に行ってる。

もしA太郎が身近にいたら「サキちゃんて美術館よりも美術館にいる自分の方が好きそうだね」と言われそうだが、「そうね。そりゃ好きな場所にちゃんと赴いて好きなとこの色やら空気やら力一杯体の中に満たせてる自分が好きなんて当然でしょ」と、K子ちゃんの慰めなしに言い返せるくらい、私はもうびくともしないのだ。


昨日ぬるい風呂でおそらくスポンジ発のうすら臭いにおいに包まれながら「そういや最近よく行ったな。」と思ったし、振り返ってやる。

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①三菱一号美術館 「三菱の至宝展」

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三菱一号は好きな美術館だ。木造のレトロな洋館で、そこにいると良家の子息たちの舞踏会への憂鬱のため息や、階段でのおしゃべりが聞こえてきそう。漠然と鹿鳴館のことや歴史に消えてきたメロドラマを思えるのだ。

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ここには「曜変天目」を見に行った。びじゅチューンでいっとう好きな曲、「曜変天目ディスコ」https://youtu.be/0TzNtM_rHE8で祭り上げられている、黒字に青のまだらがあるルリルリあわあわした陶磁器である。


案の定曜変天目は目玉級の扱いで、そこに至る通路は消灯され暗い。

黒の空間に厳かに茶器が鎮座する。小さい。目を凝らし、うん。確かにこの瑠璃の青さが稀有ですね、と思っておく。極めて控えめなルリルリあわあわぶり。

隣の説明パネルの曜変天目蜷川実花的に色彩豊かにケバケバしい。


曜変天目より印象に残ったものが何個かある。

鹿の絵がたくさん付いた壺。思い思いの姿勢でくつろいでいる鹿たち。どの面にも鹿が集まっており、かなりの鹿密度である。じっくり345度ほど眺め回しておく。

「粉彩百鹿図壺」という名前だったらしい。


鹿の絵がシャッとしたタッチで描かれた皿もよかった。朱色と緑色の組み合わせが良い。

なんか私鹿が思ったより好きなのかもしれない。

自覚している好きな動物は、象一択だったのだが。


古地図、コーラン、昔の図鑑など多岐にわたる展示であった。


三菱一号は展示会のたびに必ず1スペースは撮影OKスペースを設けてくれている。

今回は巨大なおかめ。夢に出てきそうな圧の強さ。平成狸合戦ぽんぽこじみた妖力。f:id:hasunosugita:20211002161149j:plain

従業員たちが感じの良い接客をするように、という想いを込めて、三菱創業者の弥太郎はこれを店先に飾っていたらしい。迂遠すぎる指導な上に普通に怖い。


お土産ショップに行くと金を持ってそうな初老の婦人が、売り物のレプリカ画を全部写真に収めているところだった。買えよ。


レプリカ曜変天目を舐め回すように撮っているおばはんを尻目に、印象的だった作品のポストカードを買う。私は曜変天目を特別視しないぞと思いつつ、しじみほどのサイズ感になったピンバッチなどを選んでしまう。


会計してるとさっきのレプリカ撮影おばんが「曜変天目のグッズは全部買いたいの。これで全部かしら。」とカゴの中を店員さんに改めさせていた。


東京ミッドタウンホール「北斎づくし」

本当は21_21 DESIGN SIGHTの「ルール?展」に行くつもりだったのだが、予約を間違えていたので急遽こちらに。結果的にかなりのスケールアップとなった。

ここは正直展示物より展示場所の規模のデカさと、見てる間話にならんくらい目の調子が悪く、始終目薬を指し続けていた印象が優勢だ。さっきの三菱一号の時も目がシバシバしてしょっちゅう戦線離脱していたので、これ以降はメガネで活動している。


内容としては富士山の絵が有名な北斎の全部見せまっせ、という超巨大回顧展だ。

特に北斎漫画を一堂に集めたホールは壮観。大晦日前のデパ地下ぐらいの活気がある。ここは撮影OK

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▲左下の男、四千頭身に似ている。


北斎の圧倒的多作ぶりと、現代にも余裕で通用するデザイン力に平伏す。馬ばかり描かれた漫画をよく覚えてる。

不満があるとすれば北斎は市井のおっさんを描くのが好きだったようで、美青年の絵が全然なかった。ふんどし姿でぬるぬる動いてるのっぺり男が多い。みんな酔っ払い。


北斎は他にも水滸伝原作の漫画を描いたり、富士山をモノクロでも描いてみたりと精力的に活動。さすが画狂老人を名乗っただけある。

富士山も全国の名勝地も、そういえばこの人は見に行ったことはない状態で描いていたのか。


お土産ショップは服が多かった。Tシャツがメイン。珍しいね。ハイテンションにそばを食べてるのっぺり男のバッジを買う。


③渋谷Bunkamura 「甘美なるフランス展」

フランスにそこはかとない憧れを持っている。パリが舞台のBL漫画に興奮した勢いで第二外国語をフランス語にして成績が爆死したり、ヘミングウェイの「移動祝祭日」でパリに若い頃に行かねば、と決意したり、パリ在住のユーチューバーの動画で街並みを眺めたり、パリが舞台の警察小説を読んでパリの治安に震えたりと、ずっと漠然と好きである。


有名な帽子を斜めに被ってる女の子の絵が来ている。行くしかない。

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ここは色がすごく好きだった。好きな色味を体の中にいっぱい取り込めた。

淡い色の点描が鮮やかな全体像を結ぶ印象派の絵がとても良くて、その絵を行きつ戻りつしていた。ポール・シニャックの「オーセールの橋」。青みがかった黄色やエメラルドグリーンやピンクや。


マリー・ローランサンという画家の絵も良かった。ふんわりしたタッチで淡い輪郭の女の子たちの絵がとても優美で神秘的。憧れを体現したような姿。かわいくて綺麗だった。

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▲ポストカード買いました。

ここのお土産はポーラ美術館から一部出張してる。


そして何といってもですね、音声ガイドが下野紘さんなんです!

入場して「え!?下野紘がやってるの!じゃぁやろうか…」と。

嘘です。実は行く前から、この展示会のことを調べてる段階で下野紘が音声ガイドなことは知っていた。であれば絶対に行かなくてはと密かに決意していたのよー!

普段自分のペースで見たいからガイドは使わないのだけれど。ガイドの下野紘のお声はそれはそれはうっとりで、普段の親しみやすいおっちょこちょいなキャラは一歩後ろに引き、甘美でしっとりとアナウンスされていたので終始ぽわん。としてしまう。


帰宅した晩は鬼滅の映画がやっていて、やっぱり善逸はうるさく元気だった。翌日ネットニュースで結婚を知った。おめでとう。

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サントリー美術館「刀剣 もののふの心」

刀剣がいっぱい。刀剣乱舞がお好きな方には垂涎の展示だと思う。私はまったく刀剣乱舞を通っていないので、刀の放つやたらと強い光と流変形に魅せられていた。「この刀で斬る素振りをしただけで相手の骨まで砕いてしまう」という凄まじい評判の「骨喰藤四郎」にカッケー!と震える。

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▲骨喰藤四郎のポストカード でかい。定形外になってしまうか?

「ほねくいとうしろう」と読んでしまい弟に散々馬鹿にされた。


刀は武器であるという実用面はもちろん、鬼を斬り魔を避ける力もあると信じられていたとのこと。鬼滅だ…と思う。


刀の所有者もののふ=武士にも光を当てており、絵も多数あり。私はこの絵の展示が好きだった。

歌川国芳の浮世絵の妖怪の禍々しさとキャッチーさに惹かれる。信長や知らんおっさんを描いた浮世絵たちも、トレーディングカードのように構図がきまっている。まさに見栄を切るような覇気を感じる構図とパキッとした色彩がかっこいい。


一番気に入ったのは小伊勢物語の絵巻。(タイトルうろ覚えなので違うかも。)

海の向こうに死んだ若様がいて、思わず呼び止める元家臣というワンシーン。その若様がすごい美形。かわいくて綺麗。なんともおぼこい。

二人はその後一緒に滅亡した我らが一族の弔いをすることができたらしい。よかったね…

この若様の顔が気に入ったので絶対にポストカードが欲しかったのだがグッズ化なし。しもぶくれの義経の絵がグッズ化されており、あんたじゃない!


日本史には疎いが、日本画は描かれてる人々の姿がどことなく噂好きで俗っぽいのが憎めなくて楽しめる。みんなちょっとやにさがっている感じだよね。西洋画とはまた違う地に足のついた親しみがある。昔の日本は禍々しく埃っぽくて人が元気に俗だった。


グッズは刀剣乱舞のものが割とある。ファンの人はうれしいと思う。そして前述の骨喰藤四郎はめっちゃかわいい美青年になってるんだね……

何にも知らない母がおみやげに買っていた。


今年ももう残すところ3ヶ月だけど(!)、行ける限りたくさん美術館にまた行きたい。


10/4 追記


⑤目黒庭園美術館

キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート

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この時代の植物の絵は「科学的に正確であること」が重視されていたそう。そのためか緻密で繊細な筆致。きっぱりとした輪郭で描かれ、花びらや花芯などの分解図も横に書き添えられていた。
夫に先立たれた未亡人が生計を立てるため始めたボタニカルアートで頭角を表した…という逸話も。
メインに花の絵を据えつつ、時計台がそびえる背景が何とも不穏かつ幻想的な絵も印象的だった。
展示はレトロな本館から、渡り廊下先の新館にも続く。
ドローイングルーム?だったかな。
書斎のような作業部屋が再現されているセットがあり、友人と「こんな部屋で創作をしてみたいもんよね」「あそこで気取りながらテテジンのこと書くんでしょ」「TaeJin is forever」「後世の人もテテジンのとこで解読につまるだろうね」などと戯言を申しておりました。
きっぱりした現実的な描写の花々は凛としつつもやはりかわいらしく綺麗だった。

それにしても目黒庭園美術館はいつ行っても素敵なところ。天井から下がっている丸や幾何学のランプや憧れを詰めたようなバスルーム、暖炉や食器の数々など、今はなき貴族階級の残したロマンがそこいらに漂っている気かまします。