西野七瀬に舌打ちをしてしまった。
コンビニの窓際で水着の女の子たちがほほえんでいる。
その中に水着ではなく服を着て、ちょっと小首をかしげた西野七瀬がいた。
見た瞬間、舌打ちをしてしまった。
してから、大変おどろいた。
こんなにも本能で嫌いなのか、
舌打ちという明確なイラつきが自分から飛び出したことにびっくりした。
困ったようにほほえむ歯がゆい子。
西野七瀬がきらいだ。
だからといって舌打ちをする自分をよしとする気はさらさらない。
むしろ焦った。
そんなにも心に余裕がないのか。
こんなにもイライラを心にストックしていたのか。
電車で必死に席に座ろうとしたり、西野七瀬に舌打ちをしたり
生活の中でやんわりとヤな感じの私になっていく気がした
西野七瀬に舌打ちをしてはいけない。
西野七瀬に舌打ちをしたい気持ちが自分の何らかの好みや美的センスの裏打ちだとしても。
西野七瀬に舌打ちをしてはいけない。
私は毎日、舌打ちを誘発したくだんの西野七瀬の表紙を眺めることにした。
西野七瀬にイラつかないようになりたい。
ふっと微動するイラを押さえ、親しみすらこめるように西野七瀬をながめる。
3日目で西野七瀬は目になじんだ。
そして別れは突然に。
今日、西野七瀬はいなかった。
私を舌打ちに導き、そんな己の生活汚染に気づかせたあの西野七瀬がいない。
そうだ
今日は月曜日
週刊の命は生まれたての曜日に静かに消えた
西野七瀬に舌打ちをしてはいけない
。