今日のお題は「森 屍 燃える罠」の「王道ファンタジー」。
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シャベルのさくさくした感触に楽しくなった頃、違う今は全然最悪の瞬間なのだ、とジュネは思い出した。
コツン、と音がして白い棺の角が覗く。
エストの亡骸は嘘みたいに綺麗だ。
減らず口だったその唇は永遠に閉ざされ、雪のように沈黙が降り積もっている。
「エスト また会えたね」
そっと抱き上げる。
扉の向こうをくぐればまた君のやかましいおしゃべりが聞ける。
最後のあの瞬間、エストが放った一撃には何の迷いもなかった。
君と僕が違うことなんてずっとわかってたつもりだったけど。本物は君だったんだね。
ジュネは気づいている。先ほどから足が思うように進まなくなっていること。森の同じ場所に何度も戻って来てしまっていること。
でも構わない、と思う。
右頬が熱い。扉を超えた瞬間、腕の中のエストが微笑んだ気がした。
森を吹き抜ける風にパチパチと焚き火のような音が混ざる。