さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

一張羅に敗北する

人の体は三ヶ月如きでは変わらないらしい。これは私がお腹を始終ピーピーに壊していた時にかかった消化器内科の先生に言われたことだ。「酒をやめれば治りますかね?」と7割がたそうだろうも思いつつ質問する私に先生は「うーん あんまり関係ないと思います。酒を飲まなくすると言ったって三ヶ月以上やらないと体はそうそう変わらないんですよ。」

 

そうは言っていられない事態だ。私はすべてのビールを断ち切る。減量のためだ。なにせ私は62キロあるのである。いや、数字は実のところ問題ではない。それよりも、キツかったのだ。コンサート用に買った一張羅のワンピースが。

 

一昨日、私は愛するWayVのコンサートに行ってきた。私は常にコンサートには新しい服を着ていきたいという気概を持っているタイプなので、今回も開催二日前にルミネに駆け込んでいた。それは前チャックの素敵なワンピースで、ややくすんだメタリック色は近未来的な雰囲気を醸していた。何これDiamonds Onlyじゃんともはやこじつけイメージで大いに浮かれた私はあえて聞き逃してしまったのだ。店員さんの「ではこちら今着ていたサイズのSでよろしいですね!」だって丈はピッタリだった。色も似合っていた。

 

予兆はあった。帰宅しドヤ顔で試着姿を披露する私に母は「なんだか胸が大きく見える」と微妙な顔で言った。さらに当日出発前化粧をしながら「なんだか体がカッチコチに固定されてるな」とも思っていたのだ。

しかしながら。あまりに残酷ではなかろうか。駅に向かう車の中、ワンピースがキツくて息ができないというこの事実は。

 

一張羅である。試着はした。ほっそり見えた。シルエットは良い。でもその下で体が真空パックされる。座った時にこうなるとは。「近未来的なメタリック」どころかこれはさながら鎧だ。胸を叩くとコツコツ言う。

すわ帰宅か、と思うほどの呼吸困難のさなか、意外にもこの服の構造に救われた。チャックだ。なにせこのワンピースはチャックが前面を縦断している構造。

ならば下げればいい、チャックは!


折しもこの日は大雨かつ肌寒い日。ワンピースの上にジージャン、さらにレインコートを着込んでいたため、私は賭けに出た。ジージャンに隠れている部分ギリギリまでチャックは下し、(この時点で圧政に苦しむウエスト王国にたちまち自由がもたらされ、わが腹肉たちは歓喜の舞を踊った)当然ジージャンのボタンは全て閉めた。これによりあたかも、デニムジャケットとおしゃれなスカートを履いてきた女が出来上がった。自らの情けなさと咄嗟の対応力を同時に実感し、思わず遠い目で乗る特急電車。危うくWayVを見る前に窒息するところであった。

 

このワンピース呼吸困難事件を聞いた母は私以上に事を深刻に捉えたようだった。娘の想像以上のデブ化にショックを受けた母は一念発起、有象無象うごめくネットの海に答えを求めた。「太りやすい体質 食事」「痩せる食事」「体重 減らす 食事」

 

こうして私は家族を巻き込み(母だけ)、減量に取り組むこととなった。弟からは63キロになると「ムサ」というオリジナルの蔑称で呼ばれるというペナルティーを受けるため、気を引き締めなければなるまい。今のところ、「サラダを先に食べ切るまでメインを食べない」「僕はすべてのビールを断ち切る」作戦を地道に実践していこうと思う。支離滅裂な昼間の私が強敵である。※昨日は大きなカレー(なんかお腹空いてるかよくわかんないな〜と思っていたのに)、今日は油そば(大)(並盛りの食券を買ったのに店員さんから「大盛りでも同じ値段です」と言われ、食欲に抗えなくなった)