藤井風のフリーライブ。
広大な日産スタジアムの真ん中にたった一人、藤井風がピアノと共に立っている。
藤井風の歌声は文字通り風を巻き上げる。
無観客だったが、かえって彼の圧倒的な力が解放され、荒れ狂っていた。
祈りを吹き込むように歌い、時にわめくように曲を操る。さながら雨の空に音楽を奉じる儀式のようでもあった。
彼は虚しさを、怒りを、噛み殺されたすべてものを音に乗せて思うまま暴れさせる。好きなだけ音の中で駆けずり回ったそれらは、安心して眠りにつく。
挑むような目つきで、負のパワーすら躍りに変えて雨の空から光を引き摺り出す。
そんな圧倒的な1時間だった。
帰ろう。うさは晴れたのだ。