さすがにアヒージョ

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夏休み読書感想文④収容所から来た手紙

収容所から来た手紙 

辺見じゅん (文春文庫)

シビリア抑留者の話。これまで全く関わってこなかったジャンルのものを読んでみたくて手に取った。ニノで映画化されるらしい。

※追記

ケンティーも出るんだね!


まずは収容所=ラーゲリの過酷さに圧倒される。凄絶とまとめるには到底、倒れていった者たちの辛苦を語りきれないほど。体力的にも精神的にもいっそ生きる方が辛いと錯覚するようになってしまうような日々。そんな中でも主人公山本は帰国(ダモイ)を信じ、お手製の新聞を作ったり、句会を主催したり、同人誌を発行したりと創作活動を通してラーゲリの収容仲間たちを鼓舞し続けた。彼にとって創作とは折れない杖だ。絶対にダモイの日を迎えるという意志の強さに胸打たれる。何たる創作意欲、そしてカリスマ性。


紙はすべて没収され、密告も横行する厳しい環境においても、彼らは句を綴り互いの故郷への想いを共有した。どんなに物理的に奪われても、本当の意味で人からすべてを奪うことなどできないのだ。


帰国の日を迎えることなく病で絶命した山本。彼の遺書を日本の家族に届けるために奔走した仲間たち。タイトルが「収容所から届いた手紙」ではなく、収容所から「来た」手紙であることの意味に気づくラストに涙が溢れた。