さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

aikoの「瞳」で深淵を覗く

aikoを見ようとyoutubeを開く。

「瞳」のライブ公式映像。


aiko-『瞳』(from Live Blu-ray/DVD『My 2 Decades 2』)

aikoの歌声は丁寧に温めてどこまでも引き伸ばされるうすいガラスのような。

熱を持ったまま静かに均一なガラスが伸びていく。

 

「瞳」におけるaikoの完璧な歌い上げ。曲に映える形に寸分違わず沿わされた声。

 

祈りと同時に呪いも少し感じる。

歌う相手のすこやかな日々を願いながらも、生きていくことが悲しみを避けられないことを告げる厳しさ。

情念の重さは外からの忌むべきものを跳ね返す結界となる。

おどろおどろしく見える想いを向けられるあなたであることが、

いつか降り注ぐ無情の雨をしのいでくれるだろう。

 

血の通った祈り。aikoは甘くない。

身を切るような悲しみを拾ってしまうことが人生であると知っているのだ。

 

aikoの歌は微熱をもたらす。

辛くなるけど、心の底で叫んでいる声を無視するなと扉と叩いてくるのだ。

それは強引に思い出に眠っていた疼きを引きずり出す。

 

一方でその想いはあまりに何度も取り出しは痛みを眺めているから、思い出よりも感情が形状記憶されて微熱っぽさだけが再現されるのだった。いわゆる切なさと言われるものの正体だそれ。

 何があったんだっけ、もう忘れちゃった。