さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

SexyZone「 POP STEP」 短編 「タイムトラベル」

「タイムトラベル」

SexyZone 「POP STEP」より








サラサラとおちていく砂。

それはひっくり返さなければ溢れていく一方だ。ひょいと持ち上げれば一転する砂時計のように、時間ごと戻せたら。








早く着いていると張り切ってるやつだと思われそうで、あえて30分遅れて会場に着いた。




「おーい遅いぞ!」「ひさしぶり」「もう乾杯終わっちゃったよ」「ここ座りなー!」

たちまち仲間たちの声に飲まれる。


あと少し、身を委ねていれば泳げるはず。そっと潜るように、この場に自分を馴染ませていく。







ふと視線を感じると、いた。

いや、意識していたのは俺。



たらした釣り糸のように俺の記憶はずっと物欲しげだ。たゆたえば待ち望んだ一瞬が来ると、なかば祈りだ。それも怠惰な。




「あのとき好きな人とかいた?」

わかってて問う君の声が刺さる。



何度も蓋をしようとした記憶。

打ち消せば打ち消すほど、この想いが否定しようもないほど育っていると認める日々だった。






「ごめん」「え?」

あの時手を離したのは俺だ。差し伸べたくせに怖くなって。驚くほどスムーズに、俺は記憶を辿れた。







走り去った部屋、

ふみだした一段目でつまづく階段、

まとわりつくような夕日と夜の訪れを告げる街の音。


通い慣れた道よりもたやすく戻れるあの日の感情。





「知ってたから」俺にしっかり刺さってることを確かめてる。





初めて目が合う。鼓動がうるさい。



「この後は?」

抱き竦められるよりタチが悪い。

鮮やかな光に包まれたように。

笑ってしまうほどの敗北感が沸き上がった。




砂時計のピンクが光ってる。流れ出したそれはもう、天地を戻されたんだ。