さすがにアヒージョ

最愛の人が何人もいるタイプ

エンドレス風呂イヤ期

今日の風呂入りたくなさは今年一だった。

風呂の影がちらつき始めたのは10時頃。父は食事を終えた瞬間から風呂に入ることに全意識を奪われる。箸を置いた途端に風呂のことしか考えられないのだ。そして家族の誰よりも長風呂。彼が風呂に入ると宣言するのは9時過ぎだが、「出たよ」という声が聞こえるのは10時半頃である。それはないだろと思うが、彼×風呂の組み合わせは軽く時空を歪ませるのである。

私は夕食をとる時間が遅いので必然風呂の順番はワーストである。ビーワースト。

わかっている。本当は「出たよ」と最初の鶴の一言が聞こえる10時代に速やかに入ることが勝ちへの最短ルートだ。しかしながら。お腹いっぱいなのよ。というか理由なんてない。めんどくさいのだ。なので当然「出たよ」に対する答えは沈黙である。私はスマホの小さな画面に吸収されながらも風呂の存在を感じる。この毎日訪れる鬱陶しき存在!

喉から手が出るほど欲しい。「既に風呂に入った状態」が。10時半過ぎて10時40分ごろになると「ねぇ11時台になるまでに入れば相当優秀なもんよ」と内なる私からの勧めが聞こえ始めるが無視する。

11時。ほらもう11時だよ!この時間ならもう風呂に入ったって意味がない!だってもう既に遅い時間なんだもん!俄然開き直りモードになる。無目的YouTubeを開く。すると大して好きでもないアイドルのメンバーとの戯れ動画、知らんユーチューバーのサプリおすすめ動画、毒の専門家だけど質問ある?など次々と的を外した動画ばかりがサジェストされ、私はすっかりバカな学生みたいな脳に停滞する。あれもこれもつまらない。コメント欄は作者を崇拝するという態度で全会一致のようで、アンチが見えない分平和ではあるが圧力を感じもする。

ここまでおざなりに時を空費しているのに、まだ風呂に入りたくない。もうこの頃には私の風呂への入りたくなさは無限に拡張するがコンセプトのNCTよりもすでに巨大化しており、東京ドームもかくやというほどの風呂嫌感情にすっかり滅入って身動きが取れない。かと言ってこのまま風呂をスキップできるほど身が清くない。というかむしろ汚い。セルフイメージはスヌーピーのアニメに出てくる、身動きするたび埃が湧き出るキャラクターだ。(今の時代ならアウトなキャラクターかもね)頭が痒いのが問題。かゆい!でもまだ入りたくない!というかこの時間にもなって風呂に入れていない現状にcry  厭世観ならぬ厭風呂観に圧倒される。むきになって面白いとされるユーチューバーのネタ動画を次々開く。はははと乾いた自分の笑い声が聞こえて、時計を見ると11時50分。うん、もうわかった。観念して風呂に向かう。

11時57分風呂出。日付を超えないという最低限の防衛ラインは死守した。

米を研ぐときの猛烈さで頭を洗ったので脳が活性化した。家族にしか通じないジョークの中でも上級のものを思いついたので今すぐ披露したかったが、あいにく弟は既に就寝済み。

ドライヤー、化粧水、薬服用。さっぱり。

なんだ、風呂なんて余裕だな。